スピーカーが、なぜ音を出せるのかがわからない。スピーカーは右と左しかないのに、いくつもの音を同時に鳴らせるのかわからない。わからないのに、スピーカーには良し悪しがあって、値段の高いスピーカーを買うといい音がでる。値段が低いとそれなり。その音質を感じる力が人間には備わっていて、だからこそ、高くてもいいスピーカーを買ったりする。なぜ鳴るかはわからないのに。
生きているとそういうことが多すぎる。テレビだってなぜ映るのかよくわからない。今はデジタル化されているから、何らかの形で電気のデータが送られてきて、テレビの中にあるデジタルチューナーがアナログに変換して画面に表示している。表示とは何だろうか。なぜ明るくなったり暗くなったり、色を付けられるのか。わからない。わからないけど、良し悪しがあって使い分けている。
中学生の頃、家にステレオセットがあって、オーディオに凝っていた時期があった。どうもスピーカーを地面に直置きすると共振してよくないので、ホームセンターからコンクリートのブロックを買ってきた時があった。ホームセンターは自宅から自転車で1時間半かかる場所にあったが、そこまで行って、ブロックを二個買い、自転車の後部座席に結び付けて帰って来た。バカな中学生である。ブロック自体は300円くらいしかしないので買えるのだが、よくもまあ自転車で運んだものだ。
で、音が良くなったかと言うと、良くなったような、変わらないような。でも自己満足の世界だ。どちらかというと部屋にブロックを二個持ち込むデメリットの方が大きい。そんなのを部屋に置く中学生なんていない。
そんな実家も高校生になるとほぼ帰らなくなったので、多分、家族がそっと捨てたのだろう。捨てたとは言わないが捨てたのだろう。
今、私のそばで馴らしているBOSEのスピーカーはほんと小さいのにいい音を出す。スピーカーを買うなら私はBOSEを推す。都会の狭い家ではスピーカーを置く面積が無視できない。小さくて良い音を鳴らすというのは二重で価値がある。
オーディオに執着した中学生だったが、結局、職業がインフラエンジニアになるのと結びついていて、いつもオーディオセットのケーブルを変えたり、スピーカーの位置を変えたり、カセットテープを奮発してメタルテープにしてみたり、ドルビーノイズリダクションを使って見たり、CDデッキを買ってみたりと、設定が大好きだった。サウンドイコライザーまでは買ってもらえなかったけど、まあ機械いじりが大好きで。
今は、音楽もサブスクで聴き放題で、とっても良い時代になったよ。
相変わらずスピーカーがなぜ音を出すかわからないけれど。