なんだか5万年ぶりにPostがバズったので、このブログで補足しておきたい。また、noteでもこういった話はたまにしていることを付け加えておく。
飲食業って、開店(もしくは開店前の仕込み)から閉店までは必ず店に居なきゃいけない。長時間に渡る場合はシフトを組む。時間が決まっていてその中で効率を上げて売上と利益を追求していく仕事だ。主に回転率と顧客単価の掛け算で計算される。ただしアルバイトの場合は店舗の成果とは直接関係ない。8時間シフトなら8時間、どんな働き方をしても8時間分の時給となる。なおアルバイトが、何らかの理由で、同僚の2倍の売上や利益に貢献したとしても、そこまで時給に差が付かないのが普通だ。
じゃあ社員ならどうか。社員はビジネスへの貢献が顕著なら、アルバイトよりもダイレクトに給与で評価されよう。しかし、一店舗の店長としての成果だけであれば天井があって、もっと才覚があれば複数の店を掛け持ちし、同時進行的に仕組みを整え、エリアマネージャーのような形で出世していくことになろう。
そういった仕事のやり方を、IT業界の一員として全く異世界のように感じている。いい/悪い、の軸の問題ではない。異なるのだ。IT業界そのものの性質として、情報処理にかかる時間をコンピューターやソフトウェア、サービスを使って大幅に短縮したり、自動化したりする。ここ数年のニュースの中で、〇〇万時間削減ソリューション!という表現が異常に増えた時期があった。ひとまずは人間が拘束される時間の削減が大目標の時期があった。今は少し変わってきている。様々な業種の店舗に行くとわかると思うが、必ずと言っていいほどタブレットが付いた端末が置いてあって、利用者に対して企業の人員が提供していた時間を削減しようとしている。ビジネスそのものをデジタルで効率化することで、単に時間削減ではなく大きな付加価値を提供しようとしているのが最近の特徴である。
単なる事務作業の削減だけではなく、デジタル化によるビジネス価値の向上。これである。
さて、いくら、お店を効率化しても開店時間から閉店時間までの時間を削減することはできない。売上が8倍になったから店を開けておく時間は1時間でいいですよね、ということにはならない。
8時間サービスし続けることが価値だし、それならば、その時間がより顧客にとって素晴らしい時間になるように努力することが飲食店の目標になろう。カフェを開いたなら、回転率や売上を上げるだけじゃない。顧客の居やすいインテリアや空気感、BGMや接客まで、8時間を考え抜くことが目標となる。
でもIT業界の場合は、8時間を1時間にしようとか、10秒にしようとか。そもそも自動化して無人にしようまで思い浮かぶので「ここちいい」ではない。やり方によっては、人の仕事を失わせてしまう機能まである。だから、そもそも仕事の立ち位置が対照的なのだ。例えばカフェで、コーヒーが1日1000杯出るとしたら、1000杯をあらかじめ作っておき、来る客まで特定してこちらから届けてしまい、店など閉めてしまうくらいの発想が必要になる。飲食の常識やビジョンからしたら無茶苦茶な話を、まじめにしているのがこの業界だ。
それが素晴らしいと言う人、いやいや飲食の働き方の方が良いと言う人、それぞれいると思うしそれでいいと思う。何を自分を価値としてもたらしたいかが重要で、自分の哲学にあった場所で働けばいいと思う。私は飲食で素晴らしい結果を出している方もリスペクトしているし、よく利用もしている。昨今の「何でも自動化」(例えば入店からオーダー、配膳から精算まで、誰にも合わない店舗形態)が本当に、客にとって価値があるのかも歓心を持って考えている。あえてアナログで、素晴らしい接客と料理を行うのも、高い価値を感じられる。
だから、IT>飲食でも、IT<飲食でもない。それぞれの考え方があっていい。ただ、それぞれの考え方に対して、そこで働く人はフィットした価値観を持って働くべきだし、どうしても合わないと言う人は、残念ながら良い結果を残せないのも事実だと思っている。
というのがこのポストの主旨だ。伝わったらうれしい。